Dr.MANAの南仏通信?フランスのエスプリをご一緒に…?
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<実録>目の冒険(その1)・病者の権利(2024.02.01)


ある日のこと、私は時の流れを遡る旅に出ることにした。旅の名は“多焦点IOL挿入による水晶体置換術”である。老眼と白内障の進行をストップさせ、あわよくばリバースさせて若返るという魂胆である。かつて私は幹細胞治療の魔法に魅惑されて、老眼解消を希求し何度も点滴を試みた。都度2億にも培養された幹細胞たちにより、痛みは激減し感覚の鋭敏化には寄与したのだが、老いて固くなった水晶体には一向に効果を現わさなかった。そこで、わが心中の指揮者は次なる方式を選択したのである。



Image created by OpenAI's DALL-E



私は昔から船やアルコールに酔いやすく、老眼鏡の奥行き感に適応せずしてメガネ酔いをするような体質であった。皮膚観察を生業とし読書好きな私にとっては死活問題である。眼内に挿入するという「多焦点レンズ」の存在は知っていたから、“白内障と同時に老眼も治る”と、年長の知り合いにも勧めていたのである。ただ、白内障そのものはまだ進行していない状態で、手術するには躊躇があったのだ。
最終判断を促したのは人工レンズの画期的な先進性である。〈メガネの煩わしさから解放される〉の未来を夢に見て、清水の舞台から「エイッ」となった。


手術は「目の冒険」だった。〈一瞬で終わる〉〈全く痛くない〉といった口コミの声に期待していたが、私のケースは少し厳しかったようだ。瞼を開けたままにしておく前処置が何しろ辛い。瞼が伸びたりキレたりしたらどうしようと思った。
手術自体は〈アッ〉という間であり、レーザー光や人工レンズの挿入の光景も印象的である。そうであっても、もう片方の目の手術前の不安には怯えた…陣痛を怖れる経産婦の如くに。
翌朝、眼帯を外した瞬間、近くのものがはっきりと見えるのを確認できた。けれど脳はまだ人工レンズに慣れていない。予想よりも白目(結膜)部分が赤くなっている。しばらくは派手なサングラスをかけることにしよう。



Dr.MANA、術後の診療風景。



多焦点レンズはまだ高価格といっていい。目をかなり使う専門家の領域かもしれない。私の感想を述べれば、レンズは今一段グレードアップできる。その時こそ保険適用となるべきだろう。自由な視界を保って、月や星のかそけき美しさに陶然となれる権利。それこそ今ある病者が手にする喜びなのである。
この冒険は、まだ続く。