Dr.MANAの南仏通信〜フランスのエスプリをご一緒に…〜
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究極のアンチエイジング法、国際比較!?(2007.04.17)


2007年3月にモナコで開催された国際抗老化医学会に参加してきました。詳しくは『はだぢから開発室』のブログをご覧ください。
アジアのセッションでは、同学会のクロード・ソーシャー先生の座長のもとに、日本抗加齢学会の理事を勤める米井嘉一先生、鶴見歯科大教授の斉藤一郎先生、形成外科の山下理絵先生など名だたるドクターが発表なさいました。
ここで私は老年医学にも精通している精神科医、和田秀樹先生の代理講演をつとめてきましたのでご報告。

現代の老人は、トレーニングにより若い時とさほど変わらぬ体力を温存することができ、脳力にしても若者と比べ遜色ない人たちが増えてきてます。青年期と老年期の大きな違いは何か。それは使わなくなった機能(体力や知力)の低下が著しい、このひと言に尽きます。
実に『人間の老化のスタートは、体力でも記憶力からでもなく、実は40代からはじまる感情の老化である』のです。数千に及ぶ画像診断から、老化した脳は特にその前頭葉の萎縮に特徴があると考えたのでした。

感情の老化を防ぐポイントは、主に3つあります。

1:やる気や人間らしさを司る最高中枢の前頭葉をよくはたらかせること
2:脳血管障害のリスクを高める動脈硬化をおこさぬようにすること
3:鬱病因子のキーである脳内伝達物質のひとつ、セロトニンの減少を抑えること

それらの対策は以下の通りです。
1の前頭葉の萎縮については、他の2つと違って薬を使って調整することはできす、現代医学では対応しきれません。
流行の脳ドリルや単純計算も血流量をアップするので有効ではありますが、それはまだウォーミングアップの段階。前頭葉を活性化するには、次なる目的が必要なのです。例えば、アート、文筆活動、料理、ガーデニング、などクリエイティビティを高める趣味をもつことはもちろん、はらはらどきどきの恋愛でも、少々のギャンブルでも、定年後の起業でもいいです。また、型からはいるのも有効です。若返りの治療を受ける、若々しい服や鮮やかな色の服を着る、女性なら身だしなみとしての化粧をきっちりする、などです。

2の動脈硬化については、糖尿病に喫煙などの他、メタボリックシンドローム系が悪化因子となりますが、コレステロールなどは少し高いくらいに保つ方が逆に長生きだとか、血糖値が少し高いくらいの方がアルツハイマーになりにくい、などの実証もされてきています。要はバランスの問題で、ストレスのことも考慮すると、検査値だけやみくもにさげればいいという問題でもないわけです。例えば実際に60兆あるといわれる細胞の細胞膜(皮膚も関わってます!)やホルモン系の原料はコレステロールなのです。

3でいわれるセロトニンとは、ドーパミン(喜び、快楽)やノルアドレナリン(恐れ、驚き)などの伝達をコントロールして精神を安定させる物質で、原材料はトリプトファンといわれる主に肉類に含まれる必須アミノ酸です。そもそも歳をとったら肉食を抑えて粗食がいいというのは迷信です。1947年に第2次世界大戦が終わるまでは、日本は平均寿命が50歳を超えない世界有数の短命国であったわけです。適度の栄養をきっちり摂取することこそ(時に少しくらい過剰でも)鬱を防ぐ手段でもあるのです。
また、落ち込みのバッドスパイラルにはまりそうな時には、断ち切るリチュアルを作る──買い物、友人への愚痴、おいしいものを食べる、SNSで感情を吐露する──なども効果があります。

……とまぁ、このような素晴らしい内容でした。
わかりやすくいえば『反社会的なことでもない限り、歳をとってますます大胆に、好きなことをして遊んでしまおう』『年寄りのくせに……』と顰蹙をかうくらいの不良老人を目指し、『年甲斐もない』を最高の褒め言葉としよう、ということです。
そして数ある手段の中でも一番有効なのは、各方面の脳を最も活性化させるという『恋愛』なのです。


発表が終わった私は心からリラックスして、趣味であるヒューマンウォッチングを開始しました。
学会に参加している熟年ドクター達のおしゃれな容貌にスタイル、旺盛な食欲、葉巻をくわえる姿、女医達のちょい露出系のスーツ、挑発的な視線の絡ませ方etc、そんなものをちら見しながら……、

(゜▽゜) はっ!!! そうだわ!

彼らは、すでに実践している。
呼吸するがごとく無意識にせよ、意識的にせよ。
目覚めよ、日本人!

そんなことをつらつら考えながら、夜、カジノをひやかしに行きました。そこで最良の感情の老化防止法を実践している数々のちょい悪ドクターたちに出会いながら。